ARCRESTに勝った?K&Fの超低反射プロテクトフィルター

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K&F CONCEPT NANO-X Ultra-Low Reflection カメラ/天文

交換レンズにプロテクトフィルター(保護フィルター)を付けるか否かというのは人により様々だと思いますが、私は基本的には”つける派”です。

ただ、プロテクトフィルターを使用したときのデメリットにも悩まされてきました。主にフィルターによって発生するゴーストです。これを避けるため、なるべく低反射なものを使いたいわけですが、高価すぎるフィルターは本末転倒ですから2000~3000円程度の製品をメインに使用してきました。

今回、K&FConceptから片面反射率0.1%を謳うプロテクトフィルター(NANO-X Ultra-Low Reflection)がこの価格帯で発売されていたので購入して試してみました。

プロテクトフィルター否定派の方はブラウザバックをお勧めします。プロテクトフィルターを外せば全部解決することはわかってますので。

ゴーストとフレア

写真やカメラ界隈でゴーストとフレア、という言葉は混同して使われがちです。今回はフレアではなくゴーストに注目して検証しました。

  • ゴースト:レンズやフィルターの表面反射によって生じる迷光で、はっきりとした形があるもの。
  • フレア:レンズやフィルターの表面反射や鏡筒内面反射、レンズ表面のホコリやチリなどによって生じる迷光で、はっきりとした形がないもの。

ゴーストとフレアの違いをざっくりと説明すると上記のようになりますが、明確に区別できない場合もありますので、ゴーストとフレアの定義についてここでは深堀はしません。なんとなくそういったものだと思ってください。

プロテクトフィルターのラインナップ

プロテクトフィルターは多くのメーカーから販売されていますが、概ね以下の松竹梅の3クラスに分かれます。(私が勝手に分けただけですが)


:価格優先の製品クラスです。サイズにもよりますが、概ね1000~2000円以下で入手可能です。表面反射を抑えるコーティング(ARコート)の性能は片面反射率で1%程度か、ものによってはそもそもARコートなし、という激安品もあります。ARコートがない場合、片面反射率は4%程度になりますので両面合わせて10%近くが損失・迷光になります。
なお、下記アマゾンブランドの激安品は記述を見る限りARコートのないものと思われます。


:片面反射率0.3~0.5%程度で、防汚・撥水コートなどメンテナンス性も考慮された製品です。価格帯としては概ね2000~5000円程度でしょうか。一番の売れ筋がこのラインだと思います。数年前はこの条件を満たすハクバのXC-PROがセール時には1000円代になることも珍しくなかったので私もほぼこれを使用しています。最近は値上がりしてしまい、ちょい上ランクのハクバUltimaとの価格逆転も起きています。


:片面反射率0.1%、防汚・撥水コートに加えてフィルター自体の平面性などにもこだわっている点がウリになっています。価格は6000~1万円以上と非常に高価です。NikonのARCREST、KenkoのゼクロスII(ZXII)、マルミのPRIMEレンズプロテクトがこれにあたります。


最近発売になったK&FConceptのNano-XシリーズのUltra-LowRefrectionは片面反射率0.1%を謳いながら62mm径で3000円代前半(2024.1に私が購入した時点ではクーポン適用で3000円切り)という超低価格です。これまで使ってきたXC-PROやUltimaとほぼ同価格帯でしたので気になって購入しました。

で、比較として外せないのがやはりNikonのARCRESTです。登場時、ARコート設計に関して反射率にパラメーターを全振りした、とNikonが豪語していましたね。ずっと気になっていたのですが高価すぎて手が出ませんでした。今は新型が登場していますが、K&F Conceptとの比較のために旧型を購入しました。(大手カメラ店にて中古美品を購入)。

全部自腹なので忖度0です。

K&F ConceptのNANO-Xシリーズはその特徴に応じて何種類もあるようなので注意してください。今回検証しているのは”Ultra-Low Reflection”です。

ゴーストの検証

検証方法

今回の検証方法は、強い光源を画面中心から少し外した位置に置き、その時に画面対角位置に発生するゴーストの出方を比較しました。これは非常に意地悪なテストで、どんなレンズでもプロテクトフィルターを使用するとほぼ100%発生します。しかも撮影距離によっては集光した点になるのでかなり目立ちます。光源が画面周辺に移動するとすっと消えるのも特徴です。

プロテクトフィルターの表面と撮像センサー(もしくはその周辺の各種フィルター)との間の面間ゴーストと思われます。光学設計の段階でも避けるのは難しいはずです。

意地悪テストといっても、アリエナイ様な状況でもありません。子供の誕生日のお祝いで部屋を暗くしてろうそくをつけるとローソクの数だけゴーストが発生します。また、日の出・日の入りの撮影でも同様に気を付けなければなりません。

検証のセッティング

プロテクトフィルターのゴースト検証

カメラ本体はNikonZ6、レンズはZ50mmf1.8Sです。絞りは全て開放、露出もマニュアルで全て固定しました。

撮影距離は約1.1mで、この条件の場合上記レンズではプロテクトフィルターによるゴーストがほぼ集光して非常に目障りになります。焦点距離50mmで撮影距離1mというのは先に述べたような”子供のお誕生日の写真”でほぼドンピシャな状況なわけですね。

光源としてはスマートフォンのLEDライトを使い、ゴーストが発生する位置には植毛紙を置いて極力ほかの光の影響が出ないようにしてあります。

検証したフィルター

以下の5種類のフィルター+比較としてフィルターなしの6パターンで確認しました。カッコ内の数値は片面反射率のメーカー公称値です。

  1. フィルターなし
  2. K&F Concept NANO-X Ultra-Low Reflection (0.1%)
  3. Nikon ARCREST(0.1%)
  4. HAKUBA ULTIMA(0.3%)
  5. HAKUBA XC-PRO(0.3%)
  6. Kenko MCプロテクター(1%)

結果

とりあえず全部並べてみましょう


ゴースト発生検証比較用です。


K&FConcept NANO-Xのゴースト発生検証


Nikon ARCRESTのゴースト発生検証


ハクバULTIMAのゴースト発生検証


ハクバXC-PROのゴースト発生検証


ケンコーMCプロテクターのゴースト発生検証

どう思う?

あえて性能に順番をつけるとすれば

K&F ULR> ARCREST > ULTIMA = XC-PRO > MCプロテクター

という感じでしょうか。個人的な感想としてはK&F ULRの圧勝に見えてしまいます。また、HAKUBAのULTIMAと比べればNikonのARCRESTの方がたしかにゴーストは暗いですが、3000円から1万円のフィルターに買い替えてこの程度の変化しかなかったらがっかりする程度の違いしかありません

KenkoのMCプロテクターは1200円の激安品です。ゴースト自体も明るく立派ですが、ゴーストのまわりにうっすらとさらに大きなゴーストの輪(フレア?)も確認できるので、個人的にはできれば使いたくないです。

ゴーストの色味については、距離などでも大きく変化してしまうのでここではあまり言及しないことにします。気になる人は自分で試してみてください。

ちょっと気になること

ゴースト明るさに関しては明らかにK&F ConceptのULRが優秀なのですが、なんとなくゴースト像がいびつなんですよね。ブレによるものではないことは、画像の別の部分から確認しています。これはあくまで推測というか妄想ですが、ガラス面の精度が低いかフィルター全体にわずかな歪みがある可能性があります。この点、NikonのARCRESTはキレイな円形ですよね。

まとめ

今回の検証では、ARCRESTの惨敗、K&F Conceptのコスパが光る結果となりました。個人的にはARCRESTに1万円を出すならHAKUBAのULTIMAかXC-PROを選びたいですし、同じ値段でK&FのULRが買えてしまいます。
ただし、気を付けていただきたいのは、今回の検証はガラスにほぼ垂直に光が入射する場合の結果しか見ていないということです。斜入射特性まで考慮するとARCRESTの方が優れている可能性もありますし、K&F ULRの歪なゴースト像も気になります。超広角レンズや大口径超望遠レンズを使用した際には今回の結果が覆る可能性があることも付け加えておきます。
今回は、ほぼ全てのレンズで共通して発生するゴーストに対してどれだけ効果があるか、という点で見てK&F Concept NANO-X ULRの圧勝と言っておきます。
62mm径のフィルターを梅から松までそろえてしまいました。これを使った別の検証等あれば是非コメント欄へお願いします。

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