【レビュー】大型カーボン三脚(ARTCISE AS90C)

4.5
カメラ/天文

ビクセンのGP赤道儀やSX赤道儀を使っていて、もっと軽いものが欲しい!もっと使いやすい三脚が欲しい!などと考えたことはありませんか?

今回は、望遠鏡架台(赤道儀)用の三脚として、汎用性の高い大型三脚を紹介します。ビクセンのカーボン三脚ASG-CB90との比較もしていますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

品不足で全般的にビクセンの三脚が単品では購入しにくいですし、比較として挙げているASG-CB90もかなり値上がりしています。現状ではAS90C一択であると思います。

ARTCISE AS90C

今回紹介するのはARTCISEのAS90Cです。ここ数年で中国製の激安カーボン三脚を多く見かけるようになりました。その中でも大型の部類に入るパイプ最大径φ40mmの製品です。有名メーカー製であれば10万円を超えしまうようなサイズですが、これは2022年現在は3万円半ばで購入可能です。

INNORELのRT90Cという製品も売られていますが、おそらく同じものです。値段も同じです。

追記 KS90Cという新型?も発売されているようです。2023.10.19時点では32000円+5%オフクーポンもあるのでAS90Cよりもお得かもしれません。

赤道儀の搭載に必要なパーツ

これらの三脚はGITZOのシステマティック5型の互換品です。
GITZOシステマティックは架台の部分がごっそり外れてボールアダプターやセンターポールなどと入れ替えができるようになっています。”5型”というのは取り付け部径がφ85というサイズのものです。
架台部分がごっそり外れてくれるので、アダプターを介して赤道儀を取り付けることができます。これが通常の三脚と違うところです。ただし、そのアダプターは付属していたり、メーカーから販売されているわけではありません。今回、ビクセン規格の赤道儀を取り付けるためのアダプターはMOREBLUEから購入しました。

標準付属のプレートではカメラネジ(UNC1/4or3/8)の取り付けが可能です。赤道儀を乗せたい場合には別途専用のアダプタが必要です。これらのアダプタは天体関連のガレージメーカーが製作・販売しています。
「B品」SD016-ジッツオ5型三脚対応 ビクセン取付直径Φ45
■商品説明■ 商品名:SD017-ジッツオ5型三脚対応 ビクセン取付直径Φ45

テレスコ工作工房などでも作ってくれるようですが、即納で一番安いのはおそらくMOREBLUEだと思います。また、ビクセンの赤道儀だけではなく、タカハシの赤道儀などに対応した他のアダプターも販売されているようです。

ARTCISE_AS90Cの架台部
AS90Cの架台部 左はMOREBLUE製のビクセン赤道儀用アダプター
実は溝の位置が違っていて落下防止のロックはかかりません。ARTCISEが悪いのかMOREBLUEが悪いのかはわかりません。実用上は問題ありません。

取付のねじはついていないので別途購入が必要です。M10の六角ボルトとワッシャー、ノブを用意すればOKです。
ノブの種類によっては必要な長さが違うかもしれませんが、以下のノブと長さ45mmのM10六角ボルトでちょうどでした。長さ50mmでも大丈夫だと思いますが45mmより短いものはやめた方が良さそうです。

近くにあるならアマゾンよりホームセンターがよいですね。ネジ1本からまともな価格で買えます。


MOREBLUEのアダプターと別途買ったM10x45六角ボルトとワッシャー、ノブ

このアダプターはφ60で、極軸調整ツノ位置もSX系、GP系両方に対応しています。φ45対応と書かれているものも、穴径自体はφ60であり隙間を埋めるアダプターが付属しているかどうかの違いです。(穴径変換のアダプターは単品でも販売されています。)

ビクセンの三脚規格について注意

なお、ビクセンの三脚マウント部の形状はφ45とφ60の2種類があり、GPや前期GP2赤道儀まではφ60でしたが、GP2後期からφ45に変更されています。

φ60規格のGP三脚にφ45規格のGP赤道儀を乗せる場合は単に隙間を埋めるリング状のアダプターがあればよいです。
φ45規格のGP三脚にφ60規格のGP赤道儀を乗せる場合は、すでに生産終了品ですが次のアダプターが必要になります。

Vixen 天体望遠鏡 GP60→45AD | ビクセン Vixen
株式会社 ビクセン 「Vixen 天体望遠鏡 GP60→45AD」ページです。天体望遠鏡、双眼鏡、単眼鏡、フィールドスコープ、顕微鏡、ルーペ、コンパスなど、様々な光学機器製品のご紹介と選び方、使い方、楽しみ方などをご提案しています。

ただし、このアダプターはAPP-TL130やASG-CB90には対応していません。つまり、φ60の旧GP赤道儀をAPP-TL130やASG-CB90に乗せることはできません(*)

(*)ASG-CB90+ハーフピラー+GP60→45ADのように、ハーフピラーを挟むとφ60規格のGP赤道儀でも使うことができます。

ビクセンの三脚との比較

ビクセンの赤道儀用の三脚として考えた場合、比較対象は次のものになると思います。

〇ビクセン SXG-HAL130
アルミ/2段/縮長800mm/地上高1156mm

VIXEN 三脚 ビクセン 天体望遠鏡三脚 SXG-HAL130 三脚 25161-2

VIXEN 三脚 ビクセン 天体望遠鏡三脚 SXG-HAL130 三脚 25161-2

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〇ビクセン APP-TL130
アルミ/3段/縮長600mm/地上高1159mm

〇ビクセン ASG-CB90
カーボン/2段/縮長545mm/地上高815mm

Vixen 天体望遠鏡 ASG-CB90三脚
軽量性・高剛性を両立。AXJ赤道儀にベストマッチ

〇ARTCISE AS90C
カーボン/4段/縮長545mm/地上高1600mm

三脚では重さが正義、みたいなところもあるので体力に自信があるならSXG-HAL130がよいです。
ただ、開き止めの固定が面倒(別途三角板がないと固定されない)だったり、今となっては設計が古いので使い勝手の面でちょっとイマイチです。
また、22年の3月に値上げをしてしまったのでカーボン脚との価格差が詰まってしまっているのもちょっと残念なポイントです。

APP-TL130は比較的安く、設計が新しくて使いやすいので軽いものしか載せないならオススメですが、カーボンと比べてしまうとねじれ方向の弱さが目立ってしまいます
SXG-HAL130と同様、値上げしてしまったのが残念です。

AS90Cと比べる本命はASG-CB90だと思います。
安心安全の純正がよいか、価格が安くて汎用性の高いモノがよいか、という判断になると思います。

ちなみに、サイトロンのカーボン三脚もありますが、極軸調整用のツノの位置がGP互換で、SX系に対応していないのが残念です。SX/GP両対応のアダプターが発売されれば選択肢に入ると思います。

〇サイトロン SCT-53/AD-SW II

カーボン/2段/縮長545mm/地上高830mm

サイトロン カーボン三脚  SCT-53/AD-SW set
サイトロン赤道儀用カーボン三脚

ASG-CB90とAS90C

ビクセン ASG-CB90
カーボン/2段/縮長545mm/地上高815mm

ARTCISE AS90C
カーボン/4段/縮長545mm?/地上高1600mm

ASGCB90とAS90C
上がASG-CB90 下がAS90C+GPアダプター

縮長は同等(機内持ち込みサイズを意識してる?)、ただAS90Cは4段なので地上高が倍ほどあります。眼視観測で屈折をASG-CB90で使うと正直低いです。ただし、AS90Cもカーボンとはいえ、4段フルで伸ばすとそれなりにしなるので過度な期待は禁物です。

マウント部分はやはり望遠鏡専用設計のASG-CB90は肉厚で頑丈な印象です。

また、ASG-CB90は脚の付け根部分の安心感と強度UPに貢献する脚の開き止めがあるのがよいですし、ゴム足部分を回すだけでゴム足とスパイクを簡単に切り替えられるので室内/室外の行き来を多用する場合も便利です。
AS90Cはゴム足とスパイクの付け替えは可能ですが、取り外して付け替える必要があります。
また、脚の開き角もASG-CB90の方が大きいので安定感が高いです。また、ASG-CB90は脚の開き角を好きなところで止められますが、AS90Cは実質1択です。


ASG-CB90 ゴム足を引き出した状態


ASG-CB90 スパイク(ゴム足をひっこめた状態)


AS90C  標準装備のゴム足


AS90C ゴム足は3/8インチねじで取り付けられています
センターポールを3つかってきたら延長できそう


AS90C 付属のスパイクに付け替えが可能

ちなみに、カーボン脚のパイプ径ですが以下のようになっています。

ASG-CB90:φ36mm/φ32mm
AS90C :φ40mm/φ36mm/φ32mm/φ29mm

実は最大径はAS90Cの方が大きいんですね。実際使ってみたのですが、GP2+8cm短屈折というライトな構成で確認した範囲では同じ地上高なら大差揺れ具合などは大差ないです。このクラスになると三脚よりも赤道儀の強度の方が問題になってくるので、近々SXD2でも試してみるつもりです。

ASG-CB90がオススメな人

  • 最大高さは必要ないから少しでも頑丈なものが良い人
  • 純正でないと信用できないと思う人

AS90Cがオススメな人

  • コスパ重視の人
  • 最大高が必要な人
  • 旧GP系赤道儀でカーボン三脚を使いたい人
  • カメラ用三脚としても流用したい人

まとめ

結局どっちがおススメなんだと聞かれると非常にこまるのですが、最大地上高の点から屈折/シュミカセの眼視メインならAS90Cを推します。また、通常の写真用三脚としても使いたい場合もAS90Cが良いです。
また、多少高くてもSXG-HAL130やAPP-TL130よりはAS90Cの方がよいと思います。

(追記)現状の入手性、価格を考えると、赤道儀とのセットで安く購入できるのでなければAS90C一択です。

(追記)

カーボン三脚は仕様あれこれでいろんな製品があるので一覧にまとめました。

カーボン三脚の選び方
スペック表からカーボン三脚を選ぶポイントを紹介します。

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