カメラや望遠鏡を架台に固定する場合は1/4UNCもしくは3/8UNCネジ、望遠鏡なら35mmピッチで並んだ2つのM8ネジで固定したりします。
ネジ固定は確実な一方、工具が必要であったり手間がかかることから、ワンタッチで取り付け・取り外しできる構造が昔からよく使われています。各社独自のモノもありますが、共通化されていると消費者としては大変便利です。カメラ関係ならアルカスイス規格、望遠鏡ならビクセン規格がクイックリリースシステムのデファクトスタンダードです。
これらに加えて、最近はNATOレールと呼ばれるものもよく見かけます。これはいったい何なのでしょうか。なじみが薄く、現物がないと理解しにくいのでそのあたりを写真成分多めで見ていくことにしましょう。
また、NATOレールの規格で作られているドットサイトを望遠鏡に取り付ける方法についても紹介します。
NATOレールとは?
NATOというのは最近ニュースでよく聞くアレですね。で、筒状のモノに照準などを取り付けるための規格があり、そのうちの1つがNATOレール(規格)と呼ばれているようです。ホンモノの筒だけでなく、所謂サバイバルゲームで使われるようなおもちゃでも多く使われているらしく、アクセサリー市場は豊富です。
そして、それが最近は映像業界でも使われるようになってきており、特にリグ(カメラ全体をフレームで囲み、様々なアクセサリーを取り付ける)関係のものではAmazonなどで多く販売されています。
また、呼び名についても”NATOレール”で統一いたします。ご了承ください。
NATOレールの構造
カメラ・望遠鏡界隈では馴染みのあるアルカスイス規格やビクセン規格はどちらもレールとそれを受けるクランプで構成されています。そして、基本的には台座側がクランプ、アクセサリー側(載せるモノ)がレールです。
一般的なアルカスイス互換のクランプとプレート
一方、NATOレールの場合は、固定されたプレートに対して、クランプする形でアクセサリー等を取り付けるようになっています。レール側の幅は約20mmです。アルカスイス規格のレール側の幅は40mmほどですので、アルカスイス規格よりも小さな規格としてちょうどよかったのかもしれません。
左側がアルカスイス互換のクランプとプレート、右側がNATOレール規格のマウント
構造の特殊性
基本的な構造としてはレールをクランプで挟んで固定する、というものですが、NATOレールの場合にはレールに一定間隔で溝が刻まれていて、この溝の部分をクランプのためのネジが通る仕組みになっていることです。
その一方で、クランプのためのネジが溝をよけるように作られている場合もありますし、カメラ用の”NATOレール”では溝が一切ない製品も存在します。この辺りの経緯や理由についてはよくわかりませんが、NATOレールと書いてあればどんな組み合わせでも使えるわけではないことには注意してください。
左がアルカスイス互換プレート、右がNATOレール。NATOレールには溝がある
上記写真は後で紹介するNATOレールのドットサイトですが、マウント下側の2つのネジの位置が微妙に異なっているのがわかるでしょうか?次の写真が底面側から見たものです。向かって右側のネジ部だけ凸型になっているのがわかりますよね。おそらく溝のないフラットなプレートには取り付け不可です。取り付け位置の再現性や安定性の面でわざとこのような構造になっているのではないでしょうか。
なぜNATOレールを望遠鏡で使いたいのか
結論から言えば、ドットサイトを使いたいからです。ドットサイトというのは等倍のファインダーで、のぞき込むと中央に赤く光るポイントが表示され、それを基準に目標を合わせるものです。ダットサイト、スポットサイト、スポットファインダーなどと呼ばれることもあります。
ドットサイトは等倍なので細かな部分に照準を合わせるという点では通常のファインダー式に劣りますが以下のようなメリットがあります。
- のぞき込まなくてよい(サイトから相当に離れた位置からでも照準が合わせられる)
- 正立像
月や惑星など明らかに位置がわかっているものを導入する場合や、大まかな位置がわかっていて低倍率で導入する場合などは自動導入など面倒なものを使うよりも圧倒的に早く導入できますし、自動導入のための最初のアライメントために1等星を導入するときにも非常に便利です。望遠鏡式のファインダーしか使ったことがない人には一度試してみていただきたいです。
ビクセンからも純正品が発売されており、十分使いやすいのですが価格が高い点と、位置調整が少々難しいのが欠点です。一方、本来の目的(サバイバルゲーム等)で使われるダットサイトは種類も豊富で値段もピンキリ、選択肢が多いです。
望遠鏡にNATOレールさえ取り付けられれば、おもちゃ用の照準器から好きなものを自由に選んで使えるようになります。これがNATOレールを望遠鏡で使いたい理由です。
望遠鏡への取り付け
ここからは望遠鏡への取り付けについてです。
今回紹介した製品の場合、クランプの片側を外してしまうとビクセンのファインダー規格にちょうど入ってしまいます。シンデレラフィットというには少し不格好ですがきちんと取り付けができます。再装着時の位置再現性もばっちりです。常用したくはないですが、この部分で望遠鏡全体(8cm屈折)を持っても大丈夫なぐらいにがっちりです。
傾いていますが、光軸に対して傾いているわけではないので無問題です
まさに今回の目的にあった、ファインダー規格をNATOレールに変換する製品も販売されていますが、私が購入した以下の製品はビクセン純正のファインダー脚取り付け部には装着できませんでした(ほんの少し削れば入るかもしれないといったところです)。
また、レールとクランプ用のネジが干渉する場合がある、と説明しました。この商品は上部が完全にフラットになっています。つまり、中央付近のネジ1点クランプするようなドットサイトは使用できない可能性が高いということです。このアダプターをまたいで2点でクランプする構造であれば問題ないかもしれませんが、そういった仕様は謳われていないことが多いので使えるかどうか買ってみなければわかりません。
ついでにレビュー
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この製品、というよりこの類の製品の特長といった方が良いのかもしれませんが、基本的に非常に頑丈です。野外で泥にまみれて振り回して使うものですからね。
同じ製品がいくつかのブランドから発売されているようで、探せばいくつか見つかると思います。評価の中ではドットが暗い、赤色しかないといった低評価がつけられているものも見かけましたが、天体望遠鏡用の用途としては全く問題ないはずです。月を導入したいときでも最大輝度は使いません。
悪名高いルビーコートですが、まあファインダーなんで
光軸の調整は、ビクセンのスポットファインダーのように全体を振る構造ではなく、XY方式で内部の光源位置を調整することで行います。調整のためのネジはねじ込み式のフタで隠されています。このフタまでアルミ製ですから全体の作りの頑丈さがわかると思います。
そして、一度調整してしまえばまずズレることはありません。ファインダー全体を振る方式ではどうしてもずれが生じてしまうことがありますが、この方式ではほぼズレません。本来の使い方としても多少のことでズレてもらっては困るものでしょう。
ちなみに、この製品に付属しているマウント部分はきちんと溝が作られていますのでドットサイト部分を別のものに取り換える場合であっても、その点を気にせず交換することが可能です。
この製品の欠点を上げるとすればレンズ口径がやや小さく、視野が狭いことでしょうか。この辺りを気にされる場合は大口径の製品を選ぶか、ビクセンのスポットファインダーのようなオープン型の方が良いかもしれません。また、仕組み上、レンズで集光してくれるようなものではないですし、無駄なルビーコートまでされていて光量が落ちるので暗い星の導入には不向きです。
私の場合は基本的にはつけっぱなしで、より精度の高い導入が必要な場合のみ別のファインダーに付け替える、という運用にしています。
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まとめ
いかがだったでしょうか、意外なことにビクセンのファインダー取り付け部にNATO規格のマウントが入ってしまうことがわかりました。
今回紹介した製品の場合、ドットサイト部ではなくマウント部が本体といえるかもしれません。
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