1.5万円以下で買えるギア雲台、BENROのGD3WHを紹介します。
特に天体用(望遠鏡、ポタ赤)用途としての検証、レビューです!
ギア雲台とは
一言で行ってしまえば、微動装置付きの雲台です。
軸ごとに設けられたノブを回すことで、各軸を独立して角度を調整することができます。構造的には天体望遠鏡の赤道儀や微動付き経緯台などと同じです。このようなギア雲台は何社からか販売されていますが、機構が複雑なため通常の雲台に比べて高価です。
今回紹介するBENRO GD3WHは、それらギア雲台の中でも最安といっても良い、1万円台で購入できるギア雲台です。
BENRO GD3WH
外観
筐体は金属製でマットな塗装がされています。すごく高級感があるとまでは言えませんが良い感じです。触ってみた感じではたわみなども少なく、剛性感は高いです。これについては後で望遠鏡を乗せて確認します。
3軸全てに微動、クランプ、メモリがついています。メモリについては指標もメモリ間隔もザルなので目安程度だと思った方が良いです。
微動部
普段、望遠鏡用の赤道儀/経緯台を触っている人間からすると微動ノブはかなり重めです。微動ノブ1回転で軸が約7.5度動きます。望遠鏡の基準からすると結構荒めですね(48:1のギアと思われます)。
また、ギアのかみあいだけでロックされているため、多少のガタがあります。固定用のクランプや締めこみで固定する他のカメラ雲台では締めこみさえすれば固定されますが、ギア雲台ではこのガタを無くすことはできません。私が入手した個体ではロール軸のガタが若干大きかった(といってもコンマ度程度)です。この点についても実使用で確認してみます。
バックラッシュについては各軸とも同じぐらいで、下図のような感じです。もっと高額な望遠鏡用赤道儀/経緯台との比較ですがノブが重い割にはバックラッシュが大きめです。
粗動部
粗動用クランプは、時計回りに回している間だけロックが外れます。強いバネが仕込んであるので回す力を弱めれば自動的にロックがかかります。
ノブの形状が工夫されているので引っ掛かりは良いのですが、指が痛くなる程度には重い(かたい)です。意図せずクランプが外れてしまうと事故になってしまうので、緩すぎてしまうよりは良いですが頻繁には使いたくない感じです。
また、ウォームホイルとギアの嚙み合わせを外すことで粗動を実現しているため、クランプが戻ったときに嚙み合わせが悪いとガクッと動いてしまうことがあります。この点についても、望遠鏡用の粗動クランプと同じだと思ってはいけませんね。
カメラ取付部
カメラの取り付け部はアルカスイス互換です。
ロックノブ1回転ごとに引っ掛かるようになっているため、何かのはずみで一気に緩んでしまうということはありません。下図の位置で1回転ごとに引っ掛かります。このとき、ノブ全体を引くことでさらに緩めることができます。ちなみに、締める方向には何回転でも引っ掛かりはありません。
ただし、ポラリエUは横からスライドさせないと入りませんでした。
外すときには少し力を入れれば抜ける程度なので、ごくわずかな量ではありますが幅が狭いようです。SUNWAYfotoのアルカスイス互換プレートはすんなり入りましたので、ポラリエUが大きめなのかもしれません。
望遠鏡を乗せてみた
小型の屈折望遠鏡、SharpStarの60EDを使ってみました。この望遠鏡は短く、しかも接眼部が重いのでバランスは全く取れていません。倍率は30~50倍程で確認をしました。三脚はVIELKNOVのVT-284(最大パイプ径29mmのカーボン三脚)です。
望遠鏡で使ってみた感想
全体的な剛性は十分です。各軸のガタも実際に使ってみるとほとんど気になりませんでした。アームが長いポルタ系の経緯台よりは圧倒的に安定します。
むしろ、この組み合わせでは三脚が一番華奢です。
実際に望遠鏡を揺らしてみたときに、一番撓みが大きかったのは三脚でした。この雲台には30mm以上のパイプ径の三脚を選ぶのが良さそうです。
ただ、贅沢を言えばやはり微動/粗動周りの操作性がイマイチだなとは感じます。2つの軸のクランプを同時に外すのは難しいため、1軸づつ動かすことになってしまいストレスがたまります。この点についてはポルタなどのフリーストップ+微動装置の経緯台の方が操作性は上です。
また、通常の赤道儀より粗いとはいえ微動装置だけで大きく動かすのは、ノブの重さもあいまって手が疲れてしまうのであまりやりたくないとも感じました。
ノブの動きが重いためか、微動時にもガクガクするような動きになってしまうのもデメリットです。動かしながら観察するわけではないので大きな問題ではありませんが、スルスルと動く望遠鏡専用の架台と比較してしまうと快適性は1段落ちてしまいます。
なお、上向きのピッチングは15度までなので天体観測時には水平軸を180度回すことになります。この場合は、水平・垂直の両方の軸のツマミが反対側を向いてしまいます。
ポタ赤の極軸調整用微動装置として使ってみた
三脚は同じく、VIELKNOVのVT-284(最大パイプ径29mmのカーボン三脚)、カメラはEOS6D+35mmです。
この組み合わせでも三脚とポラリエUが小さく感じてしまうのは自分だけでしょうか?
ポタ赤で使ってみた感想
アンチ極軸望遠鏡勢なので、ポーラメーター+星の動きを見ながらの追い込みで極軸合わせをしています。微動がなくてもこの程度なら問題なく使っていましたが、微動があるとより合わせやすいのは確かですね。極軸合わせは頻繁に行うわけではないので、ノブの重さもデメリットになりません。
やはり、惜しむべくはガタです。この程度のガタであれば極軸合わせ自体には影響はありませんが、撮影中に動いてしまうと当然NGです。雲台にかかる荷重が偏るように意識していればよいのですが、少々手間です。
アリかナシか
今回は気になったところをクローズアップしたので悪く見えるかもしれませんが、全体的には好印象でした。特に、剛性が高いので何かと使い手があると思います。カメラ三脚と組み合わせてさっと持ち出せるのは、今回あげたのデメリットを差し置いても大きなメリットだと思います。
安価な微動装置は貴重ですので、この値段なら天文屋さんは1つ持っていても良いのではないでしょうか。極軸合わせの専用架台とは違い、通常のカメラでの撮影時にも使える汎用性が高い点も魅力的です。
定価の3万円越えではオススメしませんが、この値段ならアリ!です。
コメント