PENTAX MZシリーズの歩き方

カメラ/天文

最近フィルムカメラに復帰したのですが、使っているのはPentaxのMZシリーズです。

当然新製品・新品はありませんので中古取り扱い店やオークションサイト等を利用することになるのですが、その選び方や使い方の注意点などを解説します。

Pentax MZシリーズとは

PentaxMZシリーズは1990年代~2000年代初頭に発売されていたフィルムカメラで、Pentaxのフィル一眼レフカメラの実質的な最終シリーズになります(*1)。

MZシリーズの発売前は機能を詰め込んだZシリーズが主流でしたが、小型・軽量化に注力して作られたのがMZシリーズです。中でもMZ-5/MZ-3は軍幹部のダイヤル操作に回帰して一定の評価を受けた機種であったと記憶しています。今でいえばNikonのZfcやZfのようなポジションですね。

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持病持ちのPentax MZ

MZといえばミラーアップ、というぐらいに頻発する不具合(持病)です。
これは、シャッターチャージ&ミラー駆動のためのモーターに圧入されているプラスティック製のギアが経年劣化で割れるor緩んで空回りしてしまい、ミラーアップしたままシャッターが切れなくなるという致命的な故障です。

頻発するがゆえに修理のための情報も数多くあり、修理すること自体は可能です。ただし、交換用のピニオンギアが入手できることと、結構バラバラにせねばならないのでそれなりのスキルは要求されることに留意してください。

幸い、適合するギアを3Dプリンタで作成し販売されている方もいらっしゃいますので、興味のある方は検討しても良いかもしれません。

MZシリーズを10台程度見てきた感覚としては、ピニオンギアが完全に割れているものは少なく、緩んでいるだけ、というものの方が多いです。この程度であれば瞬間接着剤で応急措置も可能です。

私は真鍮製のギアを手に入れたので随時それに交換しながら使っています。少し余りがありますのでご希望の方がいらっしゃればお分けできます。

不良個体をひかないために

オークションサイトでMZシリーズを買う場合、不良個体をひかないためにはシャッター動作確認済みと明言されているものを選ぶしかありません。

商品写真がミラーアップ状態ものは完全にNGであることが確定しますが、写真上ではミラーが正しい位置にあるものでも上記不良が生じているものが多数あるからです。

悪用されると嫌なので詳細は述べませんが、ミラーアップ不良の個体であってもミラーの位置を一時的に戻すことは簡単にできてしまうので、その状態で写真を撮っている可能性があるからです。

“動作未確認”でミラーが正常位置にあるものは壊れていると思いましょう。
この不良があるかどうかで値段がぐんと変わりますからね。正しく動くのであれば私が売る側ならそう書きます。

とはいえ

この不具合は時限爆弾のようなもので、出品者が保有している段階では問題なくとも輸送中に壊れるということもありますし、使い始めて1週間後に不良が発生する可能性も十分にあるわけです。

この他にも、フォーカルプレーンシャッターの先幕/後幕の幕速調整を行っているギア(というかラッチ)もプラスチック製であり割れが生じ始めている個体が多いようです。この部分が壊れてしまうと個人ではどうしようもなさそうです。


MZ-7のシャッター機構

▲MZ-7のシャッター機構。バネとギアのようなものが2セット見えますが、左が先幕シャッターの駆動バネ、右が後幕シャッターの駆動バネです。ギアの部分は金属板によってラッチのような構造となっていてカリカリと回すと徐々に駆動バネのテンションが大きくなる仕組みです。組み立て時にはこのラッチで幕速を調整してから本体に組み込んでいるのだと思われます。
右側のギアに大きな隙間が確認できますがこれは素材のプラスティックが割れ始めている状態です。


ともあれ、最も新しい機種でも20年前のカメラですし、プラが多用されていた時代のものですからどんな不具合が生じてもしょうがありません。

モーターピニオンギア修理込みで楽しむつもりの人以外は手を出すべきではないというのが私の考えです。

逆に言えば、ミラーアップ修理ができるのであれば格安のジャンク品が宝物に変わる可能性も秘めているのが面白いところであります。

Pentax Kマウント問題

もう一点、この時代のMZシリーズを使用する上で注意する必要があるのは、Kマウントレンズとのマッチング(使用可否)の問題あります。

古いKマウントカメラ/レンズには絞り情報伝達用のレバーが装備されており、これによりレンズ情報をカメラボディに伝達しています。

一方、比較的新しいKマウントカメラ/レンズには電子接点が装備されており、これによってレンズ情報をカメラボディに伝達する仕組みです。

MZシリーズはちょうどこの過渡期にあたっていて、古いレバーと電子接点を有しているもの、電子接点しか有していないものがあり、それぞれ使用できるレンズや機能が変わってきます。

機械式レバーと電子接点の両方が装備されているMZカメラは、私の知る限りではMZ-3,MZ-5,MZ-5N,MZ-7,MZ-10,MZ-L,MZ-Mです。

ただし、さらに話がややこしいのは上記機種のうち、MZ-3,MZ-5,MZ-5N,MZ-Mについてはボディ側からレンズの絞り値を設定する術がありません。つまり、レンズ側に絞りリングがない最新のレンズではシャッター速度優先かプログラムオートの2択でしか使えません。(*2

古いレンズも新しいレンズも楽しみたい、というのであればMZ-7,MZ-10,MZ-Lが候補になると思います。(*3


▲AポジションのないPENTAXレンズ。
電子接点がないため、一部のMZシリーズ、*istでは使用できない。*istDなどのデジタル一眼レフでは瞬間絞り込み測光という機能が搭載され、一応使えるようにはなった。


▲AポジションのあるPENTAXレンズ。
写真はAFレンズだが、Aポジションアリのマニュアルレンズも存在する。
最新のPENTAXレンズでは絞り環がないものがあるが、これは常時Aポジションに固定されている状態ともいえる。ボディ側で絞り値をマニュアル操作できないMZ-3/5/Mではシャッタースピード優先かフルオートの2択でしか使えない。


アイカップ問題

MZシリーズ用の多くのアクセサリーは当然ながら廃盤、流通在庫なしという状態です。
その中でもアイカップが問題になろうかと思います。ファインダー部に取り付ける緩衝用のゴム見口ですね。多くの場合、中古で販売されている個体にはアイカップがついていません。

無くても機能上大きな問題ないのですが撮影の気分を上げるためにはあったほうが良いです。で、現在も流通している部品で補うことになります。

MZ-3/5/5Nの場合

本来の対応アイカップはアイカップFGですが、2024年現在廃番です。

▲MZ-3+アイカップFG (デフォルトの組み合わせ)


アイカップFGの代わりに使用できるのはアイカップFRです。本来はK-5やK-7用のアイカップですが使用できます。多少隙間があったり、裏蓋の開け閉めができないので都度上げ下げする必要があることに注意が必要ですが600円前後で販売されているのでおススメです。

▲MZ-3+アイカップFR。裏蓋の開閉時にぶつかるのでフィルム交換時は少しスライドさせる必要があるが、2024年現在、現行品として安価に入手可能。

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なお、K-1用のアイカップFTも取り付けでき、ゴム部分が分厚いのでお好みでこちらを選んでも良いのですが、お値段が1500円ほどと高価です。

▲MZ-3+アイカップFT。アイカップFRと同様、裏蓋の開け閉めと干渉する。FTは高価なのでアイカップFRを推奨。

PENTAX アイカップFT 30128

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MZ-7/Lの場合

本来の対応アイカップはアイカップFKですが、これも当然廃番です。

▲MZ-L+アイカップFK。かなり小柄。


▲MZ-7/Lはアイピース部分の出っ張りが大きいのでアイカップFRを使うと隙間が大きく、カッコ悪いです。

MZ-L+アイカップFR。問題なく装着可能で裏蓋の開閉と干渉すること以外は機能上問題はないが、隙間が多くてみっともない。


これらの機種にはアイカップFTをお勧めします。先にも紹介したように新品1500円ですので下手をすると本体並みの価格になります。

▲MZ-L+アイカップFT。大柄で変な隙間はできない。やはり裏蓋の開閉と干渉する。

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バッテリー問題

MZシリーズは電池としてリチウム電池CR2を2本使用します。お値段としては1000円前後ぐらいです。少々お高いですがデジタルカメラ程電力は食いませんので頻繁な交換は必要ありませんが、お勧めはバッテリーグリップFGです。単三電池4本でMZシリーズを使うことができます。ニッケル水素充電池も問題なく使用可能です。

これも廃番商品ですので中古で探すことになりますが、オークションサイトであれば3000~4000円ぐらいが相場です。流通量は多い印象なのでゆっくり探せば必ず出てきます。焦らず安い玉がでてくるのを待ちましょう。

バッテリーグリップをお勧めする理由はもう一つあります。それは本体のバッテリー室の蓋が貧弱すぎることです。蝶番などという立派なものではなく、プラスチックそのものが丁番になっているという貧相なものです。100円ショップで売られているパーツケースなどでよくみられる構造ですね。

MZシリーズの電池室蓋

どう考えても耐久性がありませんので開け閉めを繰り返すとそのうち千切れることは必至です。同時期のCanon EOS7も同様の構造になっており、実際に千切れてしまってサービスセンターに持ち込んだことがあります。

幸いなことにMZシリーズは底部がほぼ全て共通の作りとなっていますのでこの部分が壊れた場合には、リサイクルショップのジャンクコーナーを探して安いMZシリーズからはぎ取ってニコイチする、という手もあります。底板はネジを6本ほど外すと簡単に取り外しできますので交換は非常に簡単です。


せっかく小型軽量なMZシリーズをつかうのにバッテリーパックを使うとそれがスポイルされてしまいます。少しでも軽量化するためにはeneloop Lite(もしくはその同等品)がおすすめです。電池1本あたり10gほど軽量ですので合わせて40gの軽量化になります。容量は通常品の半分ほどですが余程大量にフィルムを消費するのでなければ都度充電しておけば十分です。eneloopLiteは充放電サイクル数や自己放電等も通常版eneloopと比べてはるかに優秀なのでその点でもメリットがあります。

個人的eneloop回顧録
個人的な記憶にあるeneloop発売前後の状況と、所持しているeneloopコレクションを写真で紹介しながら各世代の違いを解説します。

まとめ

いかがだったでしょうか。

色々と問題の多いPentaxMZシリーズですが、この時期のカメラは経年的にも構造的にどのメーカーも何某か不具合を抱えていることが多いです。現状では新品のフィルム一眼レフは手に入りませんのでどこかで妥協が必要になります。

フィルムカメラを始めたい方、宝探しも兼ねてMZシリーズを漁ってみてはいかがでしょうか。


*1 *ist?知らない子ですね

*2  絞り優先オート、フルマニュアルが使えないということです

*3  最新のレンズではAFをレンズ側モーターで駆動するものもありますが、MZ-7/10/Lではおそらく仕様できません。レンズ側モーターの駆動にはパワーズームの電源として使用された2つの電子接点を使用するためです。MZ-3/5/5Nにはパワーズーム用のピンがありますが…

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