ロープロファイル自作キーボード云々

自作マクロパッド_ロープロファイルスイッチ PC/デジモノ

キーボード、と言っていますが今回作ったのはマクロパッドです。

最近は自作キーボードも一定の盛り上がりを見せ、部品もだいぶ入手しやすくなりました。
しかしながら、ロープロファイル関連の部品は現在も入手が難しく、選択肢も少ない状態です。

今回は自作したものの簡単な紹介と、実際に作ってみてわかったことなどをまとめました。

前提

以前から何度も言及していますが、私は筋金入りのロープロファイル(パンタグラフ)式キーボード信者です。背の高いキーボードのなにがよいのか理解できません。毎度のことながら、東プレ以外はキーボードではないとか、HHKしか認めない!という方はブラウザーバックをおすすめいたします。常用キーボードはMX KEYS MINIとK380Sです。

また、キーボードDIYは作るのが目的の半分を占める趣味です。キーボード自作は金額的にもかなりかかりますので、良いキーボードがほしい方はMX KEYS MINIやそれこそ東プレのRealforceなどを買った方が結果的に安く、幸せになれると思います。
DIYにコスパを求めるのはナンセンス。ただし、コストを無視して良いわけではない。

作ったもの

KailhChocV1を使用した自作マクロパッド

部品類は基本的に秋月電子遊舎工房で揃えました。自作基板は以前も紹介したPCBGOGOです。年末に10ドル分の送料クーポンをもらったので1500円ほどで10枚作れました。(基板自体は5ドル程度で作成可能ですが、日本への送料は安くても15ドルかかります)

ボタンは3×3の9個、プッシュスイッチ付きのロータリエンコーダーが1つです。このほかにBOOTボタン、リセットボタン、電源供給元切り替えスイッチも設けています。コントローラーはESP32-C3です。これを2枚並べて3mm厚のアクリル板の上に実装しました。電源を渡しているだけですが、基本的には何個でも連結できる仕様にしてあります。

また、bluetooth接続状態/電源を確認するためのLEDとPC-98シリーズと同じ音を鳴らすための圧電ブザーも実装してあります(これは完全に趣味)。

コントローラーはESP32-C3で、PCとの接続はBluetoothです。自作パッド(キーボード)といえばまだまだ有線式が主流ですが、当然無線式のほうが使いやすいです。無線用のチップとしてBLE Micro Proなどもあります。いろいろ調べてみると消費電力などはかなり魅力的ですが、私はお値段が10分の1で済むESP32系列にこだわっています。

無線の場合はバッテリーをどうするかが一番の課題です。Bluetoothで接続していると、待機状態でも1台あたり数十mAは消費します。一定時間無操作でSleepに入るようにするなどソフトウェア的な最適化は詰めている最中です。なお、今回電源は18650のリチウムイオン電池で、基板を適切な角度で傾斜させる機能も兼ねています。

ロープロファイルスイッチを使った自作マクロパッドの裏側

マクロパッド全体の充放電回路はAmazonで購入したモジュールを使用しました。特に昇圧等はしていません。基板側のレギュレーターは以前から紹介しているNJU7223(秋月電子で購入)を使用しています。無線式の場合、特に待機時の電力消費が重要ですので、現状ではNJU7223を強く推奨します。アマゾンなどで売られている下手な電源レギュレーターモジュールなどでは、マイコンがdeepsleepに入って数十μAしか消費しないのに、レギュレーター自身が数mA消費するというものもあるからです。

ここまでくると、充放電制御モジュール自体の待機電力も気になるところです。これについてはまだ調査中ですが、下記モジュールの場合、1週間程度待機させたぐらいで電池が干上がったりはしないので、大喰らいというわけではなさそうです。


以前MX互換スイッチで作ったマクロパッドとの比較。かなり薄く、スマートになりました。

KailChocV1を使った自作マクロパッド

キースイッチ

MX互換キーであれば微妙なバリエーション違いも含めて選択肢はたくさんあります。
しかし、ロープロファイルとなると現状では実質KailhのChocV1一択です。探せばこれ以外もないことはないのですが、国内でも随一の品揃えを誇る勇者工房でもchoc v2用のスイッチは取り扱いがあるのにキーキャップがない、という状態です。入手性などなどを考えて、KailhのChocV1一択です。ChocV2は互換性がないらしいので間違えないようにしてください。

KailChocV2のキーキャップ取り付け部はMX互換のようですが、トッププレートに激突するようです。
トッププレートを使用しない設計であれば使えそうな気もしますが、ロープロファイルであることにこだわるとやはりChocV1が第1候補です。

下記写真は、KailChocV1とMX互換スイッチの比較です。左がKailChocV1,右がMX互換スイッチです。フットプリントが違いますので基板設計から変更する必要があります。

KailhChocV1のフットプリントデータは以下から入手可能です。

GitHub - daprice/keyswitches.pretty: KiCAD footprint library for kailh choc and MX-style mechanical switches and their associated sockets
KiCAD footprint library for kailh choc and MX-style mechanical switches and their associated sockets - GitHub - daprice/...

SW_PG1350.kicad_mod
SW_PG1350_reversible.kicad_mod

がChocV1に該当します。通常はSW_PG1350.kicad_mod、リバーシブルに対応させるならSW_PG1350.kicad_modを選んでください。ChocV1は左右対称配置なので、リバーシブルにしてもピンは3ピンにしかなりません。この点はよいですね。とりあえずreversibleにしとけばよい気がします。

この他に、SW_PG1350_reversible_rotatable.kicad_modもありますが、これはrotation(回転配置)にも対応したフットプリントです。後述しますが、ChocV1はキーキャップの90度回転ができません。これに対応させるにはスイッチの取り付け自体を90度回転させる必要があります。ただ、この場合はピン穴がだるま穴になってしまうためKiCAD上で警告・エラーが出ます。この形状が許されるのかどうかは製造業者による気がするので私は避けています。

キー入れ替えソケットに対応したフットプリントもありますので必要ならそちらを使ってください。

KailChocV1とMX互換スイッチ

また、キーキャップ取り付け部の形状も全く違いますので互換性は1mmもありません。

KailChocV1とMX互換スイッチ

通常のCherryMX互換であればキーキャップ取り付け部が十字型なので基本的には90度刻みで好きな位置にキーキャップを取り付けられますが、KailhChocV1の場合は180度方向は入れ替え可能ですが、90度方向には取り付けできないようになっているので注意してください。

スイッチの種類

KailhChocV1のキースイッチは勇者工房では以下の6種類が販売されています。
クリッキー:白
タクタイル:茶、オレンジ
リニア:赤、赤Pro、ピンク

オレンジ軸は単品完売だったのでそれ以外を一通り試してみました。結論から言えば、マクロパッド用としては白軸しか選択肢がないと感じました。
茶軸はタクタイル感が非常に弱く、リニア軸との違いがほぼありません。打鍵感が最もはっきりしていて、押していて楽しいのはクリッキーの白軸です。もちろん、それなりに音はします(うるさい)ので通常のキーボードであればリニア軸も選択肢としてはありです。クリッキーのフルキーボードを職場で使っていたら隣の人に殴られても文句は言えません。

リニア軸の赤、赤プロ、ピンクは押下圧の違いなので、好きに選べばよいと思います。(赤プロは値段が高いだけという印象だったので特別なこだわりがなければ赤がピンクがおすすめです。)

オレンジは茶軸よりもタクタイルタクタイルしているようですが、高いので手が出しにくいですね。

その後Navy軸(クリッキー、白より重い)も入手してみましたが、高いので最初は白軸がおすすめです。

これらのスイッチは遊舎工房直販のほか、35個のセット品であればアマゾンでの取扱もあるので非常に購入しやすいです。直販のほうが数百円安いですが、Amazonであれば送料無料です。Aliexpressでも取り扱いがありますが全く安くないので、遊舎工房直販かAmazon経由の遊舎工房を強くお勧めします


ChocV1の種類

キーキャップ

これも残念ながら非常に選択肢が少ないです。無塗装、クリア 、白、黒だけです。
パステルカラーもふくめた少しおしゃれな感じのキーキャップも販売されていますが10個で880円となかなかのお値段です。


上段左から無塗装、白、黒
下段左から”Lavender” Purple 、 “Mint” Greenです。

下段のタイプは高いですが細かなシボも入っていて高級感があってとても良いです。高級感というか実際高いんですが。

無塗装もしくは白あたりを染色してみようかとも思っていますのでその話はおいおい。

染色はともかく、文字なり絵なりを刻印する方法が欲しいですね。レーザーカッターか…

ChocV1用キーキャップ


また、ここで紹介したものは全てキーの刻印がないものばかりです。この部分は自分でどうにかするしかありません。刻印付きのキーキャップも販売されていますが、非常に高価です。フルキー揃えると、キーキャップだけでいま普通に使っているキーボード(K380S)より高いです…

ロータリーエンコーダー

最近のキーボードやマクロパッドはローターリーエンコーダーをつけるのが流行っている気がします。かっこいいですよね。ただ、明確な使用意図がないと意外と使いづらいですし(ボリューム操作やDavinciResolveのコマ送りには抜群に相性が良いです)、左右上下の間隔が十分にないと操作が難しくなります。通常のキーピッチとそろえて19mm間隔で並べると使いづらいと思います(つまむための指が入らなくなるので25~30mm間隔は欲しい)。さらに、縦に並べる場合は間隔にかなり余裕を持たせた方が良いです。マクロパッド1つに含めるロータリーエンコーダーは1つぐらいにしておいた方が良いです。ソフトウェア的にもエンコーダー類の処理はタイミングが絡むので結構面倒です。

ロータリーエンコーダーはアルプスアルパインの製造するEC12というシリーズがキーボードなど入力機器には使いやすく、秋月では純正品、遊舎工房ではプッシュスイッチを追加した互換品が販売されています。

ロータリーエンコーダ(24クリックタイプ): 制御部品・駆動部品 秋月電子通商-電子部品・ネット通販
電子部品,通販,販売,半導体,IC,LED,マイコン,電子工作ロータリーエンコーダ(24クリックタイプ)秋月電子通商 電子部品通信販売

秋月電子通販コード:106357

秋月で販売されている純正品はクリックありタイプ・なしタイプの2種類から選べます。回したときのフィーリングもこちらの方が上です。値段は100~110円ですがノブは別売りです。お勧めのノブはサトーパーツの”K-29-6.1 Φ13.7×13.5mm ”ですが330円もしますのでおいそれとは使えません。

メタルツマミ(金属ツマミ・ノブ) K-29-6.1 Φ13.7×13.5mm アルミ削り出し: 受動部品 秋月電子通商-電子部品・ネット通販
電子部品,通販,販売,半導体,IC,LED,マイコン,電子工作メタルツマミ(金属ツマミ・ノブ) K-29-6.1 Φ13.7×13.5mm アルミ削り出し秋月電子通商 電子部品通信販売

秋月電子通販コード:112202

一方、遊舎工房で販売されている互換品はプッシュスイッチの機能が追加されていて、かつ、プラ製ノブも付属して330円です。プッシュスイッチのない純正品と比べると軸のぐらつきがやや気になります。今回私が作成したマクロパッドではこちらの製品にサトーパーツのアルミ削り出しノブを併用しています。(この部分だけで660円です)

ロータリーエンコーダ
ロータリーエンコーダは軸を回すことで入力ができる電子部品です。 キースイッチと似たサイズであるため、様々なキーボードで採用されています。 スクロールの上下やPage Up/Page Down等の入力を自由に割り当てることができます。 またプ...

基板

基板サイズは57x95mmにしています。特別な理由はないのですが、ダイソーで販売されているカードケースにぴったり収まるサイズだからです。

基板などを収めている100均のケース

100x100mmまでは料金はかわらないので、本来であればもう少し大きくしてもいいのですが、ESP32C3のGPIO本数的にもこの辺りが限界です(工夫すればロータリーエンコーダーをもう一つぐらいはいけそうかな….)。

その他

キーボードは電子部品を実装するメイン基板のほかに、キースイッチを固定するプレートやトッププレート、ボトムプレートなどで構成することが多いです。

ただ、今回はあくまでも自分でつかうことが目的なので必要最低限に収めています。具体的には、メイン基板+ボトムプレートのみです。ただし、ボトムプレートには3mm厚のアクリル板を使用していますので、かなり剛性は高いです。ボトムプレートに2mmのタップをたて、ミニ四駆用の小さなスペーサーを介して2mmネジで基板を固定しています。

また、底面はゴムクッションで滑り止め&傷防止にしています。

3M しっかりつくクッションゴム 8x2mm 台形 88粒 CS-102

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Amazonの情報を掲載しています

ちなみに、裏面に実装した電源レギュレーター(NJU7223)が思ったより厚みがあったため、その部分のボトムプレートは大穴を開けて回避しました。可能な限り薄さを追求しています。

まとめ

いかがだったでしょうか。ロープロファイルキーボード用の部品の入手はいまだ充実しているとはいいがたいですが、数年前にオープンした遊舎工房さんのおかげで国内通販のみで部品を簡単に揃えられるようになりました。

この界隈ももっと盛り上がるといいのですが…

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