シャッター速度測定器を作ろう

カメラ/天文

オークションサイトやリサイクルショップでカメラを探してくるのは楽しいものです。ジャンクだと思ったものが意外ときれいな動作品だったりとか、そういうのが醍醐味ですよね。

ただ、精密機械だけに”正常に動作するのか”確認するのが難しい部分もあります。

例えばシャッター(速度)です。

シャッター幕が動いているな、とか設定に連動してなんとなく早くなったり遅くなったりしているなといった程度しか確認できません。そこで今回はフォトトランジスタを使って簡単な工作をしてシャッター速度の測定器をDIYする方法を紹介します。

DIYとその前に

今回の方法で測定できるシャッター速度は、フォーカルプレーンシャッター機であればストロボ同調速度程度よりも遅い速度しか測定できません。それ以上になると測定誤差が大きくなって無視できなくなります。

これはフォトトランジスタ自体の応答速度の問題もありますが、原理的に測定が難しいことを理解しておく必要があります。

フォーカルプレーンシャッターの仕組みとシャッター幕の走行速度

一眼レフカメラなどに多く搭載されているフォーカルプレーンシャッターは先幕後幕の2つの幕で構成されています。

撮影前に先幕と後幕がスタート位置にセットされます(シャッターがチャージされた状態)。

次に露光開始と同時に先幕が動いてシャッターがフルオープン状態となります。

一定時間(決まった露光時間)後に後幕が動いてシャッターを閉じます。


調べてみるとシャッター幕の走行速度は概ね5ミリ秒前後であるようです。縦走りであれば24mmを5ミリ秒(=1/200秒)で走り切るわけですね。

ただ、この方法ではシャッター幕の走行速度よりも早いシャッタースピードを設定することができません。幕速度を上げるにも限界があります。そこで、高速側のシャッターでは先幕が上がりきる前に後幕をスタートさせてスリット状に露光することで部分ごとの露光時間を短くする(=高速シャッターにする)ことができます。

例えば、シャッター幕が5ミリ秒の縦走りフォーカルプレーンシャッターで1/2000秒シャッターを切る場合を考えてみます。

24mmを1/200秒で走行するわけですから、1/2000秒であれば2.4mmで、時間に直せば0.5ミリ秒です。
つまり、先幕がスタートして0.5ミリ秒後に後幕がスタートすれば、フレーム内のある1点で考えたときの露光時間は1/2000秒です。

0.1ミリ秒後の後幕スタートであれば1/20000秒シャッターも可能です。理論上は。

シャッター速度測定の原理

基本的にはシャッターが開いている時間(=明るくなっている時間)を測ればよいわけですから、比較的応答性の良いフォトトランジスタの出力をオシロスコープで観察すればこれを測定するのは難しくありません。

例えば次のような回路です。

シャッター速度測定回路

フォトトランジスタNJL7502はamazonや秋月で入手可能です。

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この方法の問題点

この方法の最大の問題点は

フォトダイオードはどこを見ているのかわからない

ということです。例えば今回使用した日本無線のフォトトランジスタNJL7502Lの場合、パッケージ自体の大きさは直径が約3mmありますし、受光角(半値角)は±20度です。透明レンズ部をセンサーギリギリまで削ってシャッターにベたづけでもしない限り直径で数ミリの範囲を見ていてもおかしくありません。

そもそも論、どこを基準とした受光角なのかはよくわからないので、はっきり言ってわかりません。LEDもそうですが、こういった場合の受光角というのは素子そのものが無視できるオーダーのサイズでの話であることが多いです。1m先から見た場合とかそういうレベルです。
測定したいシャッター速度がシャッターの幕速よりも十分に遅い場合にはフォトダイオードが36x24mmのどこを見ていようとも誤差は十分に小さくなります。
一方で先に述べたように高速シャッターの場合にはスリット状に露光していきますので、どのぐらいの範囲をみているか、が極めて重要です。
極端な場合、フォトトランジスタがフレーム全域を見ていた場合には、露光時間が正確に1/2000秒だったとしても測定結果は1/200秒になってしまいます。(理屈上)
フレーム内に複数個フォトトランジスタを配置して幕速の測定を行っているDIY例なども見かけますが、フォトトランジスタ自体がどのぐらいの範囲でどのあたりを見ているのかがはっきりしない以上、測定結果に疑問を持たずにはいられません。
少なくとも、今回作成するシャッター速度測定器は低速側シャッターのチェックのみにしか使えない、とお考え下さい。
実はこういう工夫がしてあるのだ!というノウハウをお持ちの方は是非教えてください。(知りたい)

作ってみた

今回はどのカメラにでも使えるように、適当なサイズのアクリル板の中央にフォトトランジスタを埋め込み、その周辺に空中配線でボタン電池と抵抗を接続しました。
測定はよくある激安オシロスコープを使用しました。
なお、PentaxのMZシリーズは裏蓋が締まっていないとシャッターが下りない仕様なので不要な裏蓋を一枚破壊して測定用の治具蓋を作りました。

測ってみた

手元にあるMZ-3(x2)、MZ-30、MZ-L、AE-1programの計5台を測定してみました。

面倒なので数字は取り上げませんが、数分の1~1/100秒付近ではどのカメラもほぼ正確に速度が出ていることが確認できました。むしろ露出計自体のずれの方が圧倒的に多い印象です。

まとめ

いかがだったでしょうか?測定治具自体は簡単に作れますし、一番高い部品はオシロスコープぐらいです。部品もアマゾンで全て手に入ります。
ただ、繰り返しになりますが、この治具で測定できるのは低速度シャッターのみである点にはご注意ください。次回は高速シャッターの測定方法を提案します。

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