クローズアップレンズの選び方

カメラ/天文

今回は具体的にどのクローズアップレンズを選べば良いか考えてみます。使用する計算ツールは前回の記事を参照してください。また、本シリーズのリストはこちらです。

クローズアップレンズ
「クローズアップレンズ」の記事一覧です。
本記事に記載の数値は簡略化した計算に基づく概算値です。あくまでも目安としてください。
間違いやズレがあっても当サイトでは責任を負えません。

前提

そもそもどんな時にクローズアップレンズが有効か考えてみました。色々あるかとは思いますが次の2パターンが多いのではないでしょうか?

① 花や昆虫などを大きく拡大して撮影したい。

② 料理の写真を撮りたいが、席に着いたままだと近すぎてピントが合わないのでどうにかしたい。

①の場合は最大撮影倍率は0.5倍以上、できれば1倍ぐらいほしいですよね。②の場合は最短撮影距離が問題で、近くにピントが合えばそれでよい場合が多いです。これを前提にして考えてみましょう。

上記以外にも”あと数cm寄りたいだけ”など様々な要求はあるかと思います。各自何がしたいのがよく考えるのが大事です。今回はわかりやすくするためにシチュエーションを絞りました。

注意しておきたいこと:最遠撮影距離

クローズアップレンズを使用した場合に気をつけれなければならないのは遠景側のピント範囲です。

レンズ側のピント位置を無限遠に設定したとしても、クローズアップレンズの焦点距離よりも遠くにはピントが合いません。(最遠側のワーキングディスタンス)≒(クローズアップレンズの焦点距離)です。

強い効果を得るために大きい番号のクローズアップレンズを使用するとピントを合わせられる範囲が狭くなってしまうことに注意してください。

強いクローズアップレンズを使用すればするほど遠くにピントが合わせられなくなります。

クローズアップレンズのラインナップ

クローズアップレンズはKenkoから販売されていますが、最初から設定のないフィルター径/番手の組み合わせもあります。これは番手が大きい(=レンズのパワーが強い)と径を大きくしたときに厚くなってしまうためでしょう。

49mm52mm55mm58mm62mm67mm72mm77mm82mm
No.1MCNMCNMCNMCNMCNMCNMCNMCNMCN
No.2MCN
AC
MCN
AC
MCN
AC
MCN
AC
MCN
AC
MCN
AC
MCN
AC
MCN
AC
MCN
No.3PRO1D
AC
MCN
PRO1D
AC
MCN
PRO1D
AC
MCN
PRO1D
AC
MCN
PRO1D
MCN
PRO1D
MCN
PRO1D
MCN
PRO1D
MCN
MCN
No.4AC
MCN
AC
MCN
AC
MCN
AC
MCN
MCNMCNMCNMCNMCN
No.5ACACACAC×××××
No.10MCMCMCMC×××××

PRO1D:PRO1D ACクローズアップNo.*
MC:MCクローズアップNo.*
MCN:MCクローズアップNEO No.*
AC:ACクローズアップNo.*
×:設定なし

(上記表のリンク先はAmazonアフィリエイトリンクです。)

クローズアップレンズ | ケンコー・トキナー
ケンコー・トキナーの「クローズアップレンズ」のラインナップです。

このほか、以前販売されていたものの市場在庫や、マルミからも販売されていますがラインナップは概ね同じだと思います。

計算してみる

最短撮影距離が長くて寄れない、最大撮影倍率が低い、などの問題は単焦点の標準~中望遠に多い印象です。この辺りを中心に考えてみます。

例題1:Nikon Z50mmf1.8S

最大撮影倍率0.15倍、最短撮影距離400mm、ワーキングディスタンスは約300mmのレンズです。フィルター径はφ62mmで、クローズアップレンズはNo.4(f=250mm)までしかありません。計算の結果を表にしました。

CL番号CL焦点距離(mm)最大撮影倍率最短撮影距離(mm)最遠撮影距離(mm)W.D.(mm)
なし-0.15400300
No.110000.203311100276
No.25000.25288600231
No.33300.30257430198
No.42500.36236350174
No.5200----
No.10100----

最短撮影距離は400mmというのは非常に微妙な距離で、着席したまま料理の写真を撮る場合には少しひかないとピントが合わせずらいです。あと一歩、最短撮影距離が30cm程度になれば不自由しないので、No.1かNo.2がオススメです。このとき、最遠撮影距離が50cm~1mほどになりますので向かい合って座った人の料理を写すこともできます。ピントを合わせられる範囲が狭くなってしまうのでNo.3,No.4はあまりお勧めできません。

一方、マクロ的な使い方をしたい場合には最も強いNo.4でも最大撮影倍率は0.36倍ですので少し物足りないかもしれません。

例題2:Nikon Z85mmf1.8S

同様に、Z85mmF1.8を考えてみましょう。いわゆるポートレート用の中望遠レンズですね。最短撮影距離は800mmもあるのでそのままではテーブル上の撮影は無理です。

CL番号CL焦点距離(mm)最大撮影倍率最短撮影距離(mm)最遠撮影距離(mm)W.D.(mm)
なし-0.12800685
No.110000.205221120434
No.25000.29404620314
No.33300.37338450246
No.42500.46298370204
No.5200----
No.10100----

最短撮影距離を30cmぐらいにできるのはNo.3かNo.4です。このとき、最大撮影倍率は0.4倍程になりますので、料理の全景を撮るのは難しいかもしれません。
また、No.3かNo.4を選んだ場合は最遠撮影距離が50cm以下になってしまい、ピントを合わせられる範囲が数cmしかありません。このぐらいだとマクロ専用と割り切きって使った方がよいです。

もちろん、No.1やNo.2でも最短撮影距離を半分近くに短縮できますのでその距離でよければ選択肢に入ります。

例題3:Panasonic G42.5mmF1.7

同じく中望遠レンズでもマイクロフォーサーズのLumixG 42.5mmf1.7の場合は、元の最大撮影倍率が0.31もあり、最短撮影距離も30cm程度ですので②の目的でクローズアップレンズを買う意味はほとんどありません。最遠撮影距離が短くなるデメリットが大きくなります。

①の目的でマクロレンズ的に使用したいということであればNo.3~10を使用するのがよいと思います。No.10であれば理屈上は最大撮影倍率がおよそ1倍になります。

CL番号CL焦点距離(mm)最大撮影倍率最短撮影距離(mm)最遠撮影距離(mm)W.D.(mm)
なし-0.31310240
No.110000.382641070190
No.25000.46232570159
No.33300.54209400136
No.42500.61192320120
No.52000.68179270106
No.101000.9714117071
マイクロフォーサーズはセンサーサイズが小さく、焦点距離が短いので同じ画角・撮影倍率でも最短撮影距離は短くなります。これは単純にスケールの問題です。また、もともとの光学設計上そういう考慮がしてあることが多いというのもあります。

まとめ

いかがだったでしょうか?クローズアップレンズを装着した場合、最大倍率や最短撮影距離がどのようになるかイメージできたのではないかと思います。組み合わせにもよりますが、マクロレンズと同等の1倍近い撮影倍率をクローズアップレンズで得るのは難しいです。

ここでは全ての場合について網羅はできませんので、興味のある方は先のツールを使って計算してみてください。本記事で”意味がない”と言った組み合わせでも、使用用途を考えれば有効ということもあります。

クローズアップレンズの付け外しの手間を少しでも軽減するには、以前紹介したマグネット式のアダプターが便利です。

【レビュー】マグネット式脱着フィルター
ケンコーのマグネット式脱着フィルターを見つけたので紹介します。海外向けのためかあまり知られていない気がしますが、この手の商品にしては買いやすい価格です。

また、クローズアップレンズを使用した場合には遠景にピントが合わなくなるデメリットがありますし、クローズアップレンズの付け外しが面倒だと思う方はマクロレンズを買うしかありません。マイクロフォーサーズではPanasonic、OMともに購入しやすいマクロレンズがあり、おススメです。

OLYMPUS マイクロフォーサーズレンズ M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm F3.5 Macro

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Nikonを使われている方であればAF-S DX Micro NIKKOR 40mm f/2.8Gも買いやすいです。

クローズアップレンズの話をしながらマクロレンズを薦めるのもどうかとは思いますが、比較的ハードルは低いのでクローズアップレンズであれこれ考えるより早いかもしれません。

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