今回は具体的にどのクローズアップレンズを選べば良いか考えてみます。使用する計算ツールは前回の記事を参照してください。また、本シリーズのリストはこちらです。
前提
そもそもどんな時にクローズアップレンズが有効か考えてみました。色々あるかとは思いますが次の2パターンが多いのではないでしょうか?
① 花や昆虫などを大きく拡大して撮影したい。
② 料理の写真を撮りたいが、席に着いたままだと近すぎてピントが合わないのでどうにかしたい。
①の場合は最大撮影倍率は0.5倍以上、できれば1倍ぐらいほしいですよね。②の場合は最短撮影距離が問題で、近くにピントが合えばそれでよい場合が多いです。これを前提にして考えてみましょう。
注意しておきたいこと:最遠撮影距離
クローズアップレンズを使用した場合に気をつけれなければならないのは遠景側のピント範囲です。
レンズ側のピント位置を無限遠に設定したとしても、クローズアップレンズの焦点距離よりも遠くにはピントが合いません。(最遠側のワーキングディスタンス)≒(クローズアップレンズの焦点距離)です。
強い効果を得るために大きい番号のクローズアップレンズを使用するとピントを合わせられる範囲が狭くなってしまうことに注意してください。
クローズアップレンズのラインナップ
クローズアップレンズはKenkoから販売されていますが、最初から設定のないフィルター径/番手の組み合わせもあります。これは番手が大きい(=レンズのパワーが強い)と径を大きくしたときに厚くなってしまうためでしょう。
49mm | 52mm | 55mm | 58mm | 62mm | 67mm | 72mm | 77mm | 82mm | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
No.1 | MCN | MCN | MCN | MCN | MCN | MCN | MCN | MCN | MCN |
No.2 | MCN AC | MCN AC | MCN AC | MCN AC | MCN AC | MCN AC | MCN AC | MCN AC | MCN |
No.3 | PRO1D AC MCN | PRO1D AC MCN | PRO1D AC MCN | PRO1D AC MCN | PRO1D MCN | PRO1D MCN | PRO1D MCN | PRO1D MCN | MCN |
No.4 | AC MCN | AC MCN | AC MCN | AC MCN | MCN | MCN | MCN | MCN | MCN |
No.5 | AC | AC | AC | AC | × | × | × | × | × |
No.10 | MC | MC | MC | MC | × | × | × | × | × |
PRO1D:PRO1D ACクローズアップNo.*
MC:MCクローズアップNo.*
MCN:MCクローズアップNEO No.*
AC:ACクローズアップNo.*
×:設定なし
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このほか、以前販売されていたものの市場在庫や、マルミからも販売されていますがラインナップは概ね同じだと思います。
計算してみる
最短撮影距離が長くて寄れない、最大撮影倍率が低い、などの問題は単焦点の標準~中望遠に多い印象です。この辺りを中心に考えてみます。
例題1:Nikon Z50mmf1.8S
最大撮影倍率0.15倍、最短撮影距離400mm、ワーキングディスタンスは約300mmのレンズです。フィルター径はφ62mmで、クローズアップレンズはNo.4(f=250mm)までしかありません。計算の結果を表にしました。
CL番号 | CL焦点距離(mm) | 最大撮影倍率 | 最短撮影距離(mm) | 最遠撮影距離(mm) | W.D.(mm) |
---|---|---|---|---|---|
なし | - | 0.15 | 400 | ∞ | 300 |
No.1 | 1000 | 0.20 | 331 | 1100 | 276 |
No.2 | 500 | 0.25 | 288 | 600 | 231 |
No.3 | 330 | 0.30 | 257 | 430 | 198 |
No.4 | 250 | 0.36 | 236 | 350 | 174 |
No.5 | 200 | - | - | - | - |
No.10 | 100 | - | - | - | - |
最短撮影距離は400mmというのは非常に微妙な距離で、着席したまま料理の写真を撮る場合には少しひかないとピントが合わせずらいです。あと一歩、最短撮影距離が30cm程度になれば不自由しないので、No.1かNo.2がオススメです。このとき、最遠撮影距離が50cm~1mほどになりますので向かい合って座った人の料理を写すこともできます。ピントを合わせられる範囲が狭くなってしまうのでNo.3,No.4はあまりお勧めできません。
一方、マクロ的な使い方をしたい場合には最も強いNo.4でも最大撮影倍率は0.36倍ですので少し物足りないかもしれません。
例題2:Nikon Z85mmf1.8S
同様に、Z85mmF1.8を考えてみましょう。いわゆるポートレート用の中望遠レンズですね。最短撮影距離は800mmもあるのでそのままではテーブル上の撮影は無理です。
CL番号 | CL焦点距離(mm) | 最大撮影倍率 | 最短撮影距離(mm) | 最遠撮影距離(mm) | W.D.(mm) |
---|---|---|---|---|---|
なし | - | 0.12 | 800 | ∞ | 685 |
No.1 | 1000 | 0.20 | 522 | 1120 | 434 |
No.2 | 500 | 0.29 | 404 | 620 | 314 |
No.3 | 330 | 0.37 | 338 | 450 | 246 |
No.4 | 250 | 0.46 | 298 | 370 | 204 |
No.5 | 200 | - | - | - | - |
No.10 | 100 | - | - | - | - |
最短撮影距離を30cmぐらいにできるのはNo.3かNo.4です。このとき、最大撮影倍率は0.4倍程になりますので、料理の全景を撮るのは難しいかもしれません。
また、No.3かNo.4を選んだ場合は最遠撮影距離が50cm以下になってしまい、ピントを合わせられる範囲が数cmしかありません。このぐらいだとマクロ専用と割り切きって使った方がよいです。
もちろん、No.1やNo.2でも最短撮影距離を半分近くに短縮できますのでその距離でよければ選択肢に入ります。
例題3:Panasonic G42.5mmF1.7
同じく中望遠レンズでもマイクロフォーサーズのLumixG 42.5mmf1.7の場合は、元の最大撮影倍率が0.31もあり、最短撮影距離も30cm程度ですので②の目的でクローズアップレンズを買う意味はほとんどありません。最遠撮影距離が短くなるデメリットが大きくなります。
①の目的でマクロレンズ的に使用したいということであればNo.3~10を使用するのがよいと思います。No.10であれば理屈上は最大撮影倍率がおよそ1倍になります。
CL番号 | CL焦点距離(mm) | 最大撮影倍率 | 最短撮影距離(mm) | 最遠撮影距離(mm) | W.D.(mm) |
---|---|---|---|---|---|
なし | - | 0.31 | 310 | ∞ | 240 |
No.1 | 1000 | 0.38 | 264 | 1070 | 190 |
No.2 | 500 | 0.46 | 232 | 570 | 159 |
No.3 | 330 | 0.54 | 209 | 400 | 136 |
No.4 | 250 | 0.61 | 192 | 320 | 120 |
No.5 | 200 | 0.68 | 179 | 270 | 106 |
No.10 | 100 | 0.97 | 141 | 170 | 71 |
まとめ
いかがだったでしょうか?クローズアップレンズを装着した場合、最大倍率や最短撮影距離がどのようになるかイメージできたのではないかと思います。組み合わせにもよりますが、マクロレンズと同等の1倍近い撮影倍率をクローズアップレンズで得るのは難しいです。
ここでは全ての場合について網羅はできませんので、興味のある方は先のツールを使って計算してみてください。本記事で”意味がない”と言った組み合わせでも、使用用途を考えれば有効ということもあります。
クローズアップレンズの付け外しの手間を少しでも軽減するには、以前紹介したマグネット式のアダプターが便利です。
また、クローズアップレンズを使用した場合には遠景にピントが合わなくなるデメリットがありますし、クローズアップレンズの付け外しが面倒だと思う方はマクロレンズを買うしかありません。マイクロフォーサーズではPanasonic、OMともに購入しやすいマクロレンズがあり、おススメです。
パナソニック 単焦点 マクロレンズ マイクロフォーサーズ用 ルミックス G MACRO 30mm/ F2.8 ASPH. / MEGA O...
Nikonを使われている方であればAF-S DX Micro NIKKOR 40mm f/2.8Gも買いやすいです。
Nikon 単焦点マイクロレンズ AF-S DX Micro NIKKOR 40mm f/2.8G ニコンDXフォーマット専用
クローズアップレンズの話をしながらマクロレンズを薦めるのもどうかとは思いますが、比較的ハードルは低いのでクローズアップレンズであれこれ考えるより早いかもしれません。
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