レギュレータの逆接続はOKか?

マイコン/Arduino

タイトルからしてダメに決まってんだろ!というのが正常な反応です。

が、果たして本当にそうなのか少し調査&考えてみました。結論としてはよくわからないので、識者の方は是非読んでコメントください。

条件

本記事で扱う”逆接続”とは入力電圧<出力電圧の状態のことを指すこととします。そして、特に入力側は開放状態であるという前提です。

GND側とIN/OUT側を逆にして使うという意味ではないのでご承知おきください。

入力が開放ならハイインピーダンスなんだから入力<出力かどうかはわからない、という突っ込みはなしでお願いします。

そもそも

上記条件を踏まえると回路図的には次のような状態になります。実質的に使うのは回路の右半分だけで、左半分は使わない状態です。

レギュレーターの逆接続

 

こんなことをするならレギュレータを実装しなければいいじゃないか、という話ですがすでに実装済みのものを無視したい場合があるのです。

例えば、多くのマイコン(開発)ボードでは電源入力は5Vだけどマイコン自体は3.3V駆動、という場合がよくあります。このようなボードの場合、5V→3.3V降圧レギュレータが実装済みなわけです。で、レギュレータで作り出された3.3Vは周辺センサー等でも利用できるように外部に引き出されているんですね。

じゃあ電源として5Vではなくて3.3Vのピンに3.3Vを供給してもマイコンは動くんじゃね?という発想ですね。

乾電池等で駆動させたいとき、消費電力を切り詰めるとレギュレータそのものの消費電力が無視できなくなるのでそこはパスしたいわけです。また、5Vよりも3.3Vの方が乾電池の本数も少なくて済みますしね。(3.3Vをどうやって準備するのかは別問題としてあります。これはそのうち別途書きます)

以前ESP32C3を乾電池で駆動させる記事を書いたのですが、その時読者の方に正しい突っ込みを受けたのが今回の話を考えるきっかけです。

調査

レギュレータを製造しているメーカーのデータシートなどを調べたのですが

  • 逆接続はダメ
  • ON/OFFのタイミングなどで入力電圧<出力電圧となるなら保護ダイオードを入れろ

というのが基本的な考え方です。あたりまえですね。で、その中でロームが掲載している情報の中に面白い記述がありました。

リニアレギュレータの端子保護:出力電圧が入力電圧より高くなる場合 | フローティング動作のリニアレギュレータを使った電源設計のポイント -はじめに- | TechWeb
最初に、リニアレギュレータの端子保護が推奨される場合の1つ目、「出力電圧が入力電圧より高くなる場合」に関する対策を示します。

要約すると”入力ラインをオープンにするなら逆電流はわずかしか流れないから出力側の電圧が高くてもOK”ということでした。これが永続的なものなのか、それとも出力側コンデンサからの流れ込みなど一時的なものだけを指しているのかはよくわかりません。

しかし、確かに電流が流れ込む先がないのですから逆接続にしても電流は流れないからOK、という話もこれはこれで納得できます。

レギュレータの電流制御素子がバイポーラかCMOSかによっても話が変わってくると思います。
CMOSであれば、ボディダイオードを通って逆電流が流れてしまいますが、バイポーラ素子ならその可能性はありません。また、バイポーラ素子の場合はベース-エミッタ間耐圧の問題がありますがここでは3.3Vという小さな電圧を相手にしていますので問題ないのではないかと考えられます。

MOSFETのボディダイオードを常用するような設計や使い方は原則としてNGなわけですが、ちょっとだからOKという微妙なラインなわけです。

結局結論は出ないのですが

  • ロームの上記記事以外にはこの件は見当たらない。他のメーカーの見解はどうなっているのか?
  • ちょっとならOKという”ちょっと”のラインはどこにあるのか?
  • 電流が逆流してレギュレータ内部のICが動くから消費電力低減にはそもそも効果がない、というオチはないか?

引き続き調査して何かわかったら追記します。

*追記1(実験してみました)

CMOSタイプのレギュレータ(NJU7223)と、バイポーラタイプのレギュレータ(NJM2845)を用意して、逆接続を試してみました。回路図的には以下のような4パターンです。

レギュレータの逆接続実験

入力もしくは出力側のみに電源(約3.3Vのバッテリー)をつなぎ、もう一方はオープンな状態にしました。ここで回路に流れる電流を測定しました。

その結果、いずれもほぼ定格消費電流に近い電流が流れることがわかりました。この電流はレギュレータ内部の制御回路が消費する電力に相当するものですね。ちなみにCMOSタイプのNJU7223は消費電流の公称値は30μA、バイポーラタイプのNJM2845では400μAです。

つまり、レギュレータが壊れるかどうかはともかく、逆接続の状態でもレギュレータ自体は動いてしまうためレギュレータ自体の消費電力は避けられないということです。数十~数百μAというと非常に小さな値に思えますが、deepsleepなどを駆使して乾電池での長時間駆動を考えた場合には無視できない数値です。ESP32-C3のdeepsleep時の消費電流の公称値は5μAです。

(上記PDFの56ページに記載があります。)

もちろん、レギュレータによるドロップ電圧×電流=消費電力はなくなりますので無意味ではありませんが、低消費電力をつきつめるならレギュレータは完全に切り離さないとダメですね…

*追記2

twitterの方でも識者の方に、”構造的に入力側オープンならOKではないか”というご意見をいただきました。

*追記3

本記事では”レギュレータの入力側が開放”としていますが、これはあくまで仮定の話です。マイコン開発ボードを使用する際は回路図などをよく確認してください。

5Vピンに何もつないでないからと言ってレギュレータの入力端子が開放とは限りません。例えばUSB-シリアル変換チップの電源が5Vから供給されている可能性もあります。この場合、電流が逆流する可能性があります。

やはり安全牌をとるなら、3.3Vピンと5Vピンの間にダイオード(ショットキーバリアダイオード)を接続しておくべきかと思います。追記1での実験でもわかったように、どちらにしてもレギュレータの消費電流は回避できません。

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